2015年11月4日水曜日

夢で会えた時はまた笑おう







朝、アイフォンのアラーム音で目が覚める。

いつもより少し眠たくて、いつもより身体が重いだけで何も変わってはいない。
いつものようにシャワーを浴びて、髭を剃って、
いつものように深剃りをしてしまって、髭が濃くなったなって思って、
いつものようにネクタイを締めて、7:20の快速東葉勝田台行の東西線に乗った。

何も変わってちゃいない。特別なことなんて何もなくて、
繰り返す毎日と何も変わらないんだ。
それでも心は幸せで満たされたような、物足りないような、過ぎ去っていってしまったような、
言葉では現せない気持ちでいっぱいだった。



僕が新しく始めた ” either ”というロックバンドの初ライブが終わった。
楽しみにしていた。これでもなくドキドキしていたし、ワクワクしていた。
いつか僕らが躓いたときに戻ってこれるように、
いつか僕らが売れたときに笑って話のネタになるように、
いつか僕らが解散したときにノスタルジーに浸れるように、
いつか僕が死んでしまったときに、みんなが忘れないように、
日記を書こう。思い出は忘れないようにしないと簡単に忘れちゃうんだぜ。








前日、僕は夜全く眠ることができなかった。
遠足とか、運動会の前日みたいなものじゃなくて、
好きな子に告白する前日の夜のような、
期待や不安や覚悟が強くて眠ることができなかったんだと思う。

それは多分他のメンバーも同じで、バンドのライングループには夜遅くまで
通知が鳴りやまなかった。

そのくせに、目覚ましが鳴りやむ前に目が覚めた。

例のごとく、朝シャワーを浴びて、髭を剃る。
例のごとく、気合が空回りして、深剃りしすぎてしまった。
僕の頬は火星のようにぼこぼこだ。

ライブのTシャツを決めていたら、あっという間に家に出る時間になってしまった。
とても迷ったのだけど、とりあえず、GEEKSTREEKSと
bloodthirsty botchersと銀杏BOYZのTシャツを紙袋に詰めて家を出た。

中野から国立までが長かった。
30分弱でつくはずなのに、一駅の感覚が長くて、今日一日が不安で死にそうだったよ。

それでも国立駅でメンバーの顔を見て、
「がんばるぞ」って気合が入ったんだ、午前10時30分。


国立では街をあげてお祭りをしていて、朝なのに駅は人でごった返していた。
おみこしの横を申し訳なさそうに通り過ぎ、人込みをかき分けて一橋大学に着いた。

女子大生全員かわいく見える魔法にかかって、早速クソ小さいクレープを250円で買わされた。
メンバーはそれを見て笑っていたよ。

でもね、僕はこれがしたかったんだ。
単純さ。僕はメンバーで馬鹿なことを笑って楽しいねって、
ただそれだけがしたかったんだ。
この時点で僕の幸せポイントは2億超えていたと思う。

あっという間に12時近くなって、急いでステージに向かった。








リハーサルも本番もあんまり記憶にない。
恥ずかしい話、リハーサルの段階で緊張で手がめちゃくちゃ震えていたし、
人生初めての野外、11月とは思えない照りつける日の強さ、暑さ、緊張でやられた。殺された。
気が付いたら終わっていた。一瞬で。

憶えているのは、シンセ間違えちゃったっていうことと、めちゃくちゃ楽しいなあってことと、
このメンバーでバンドができて、ライブができて心底幸せだなあって感情。


ヤスさんや、ゆうやさんのいつも遊ぶ友達(あえてnot 先輩)が見に来てくれて本当にうれしかった。
MZMZの玄さんが写真を撮ってくれたのがうれしかった。
黒見君の友達が動画を撮ってくれたのがうれしかった。
おじいちゃんやおばあちゃんが座ってみてくれたのがうれしかった。
通り過ぎる人が耳を塞いで通り過ぎて行ったのがうれしかった。
女子高生がずっと見ていてくれたのがうれしかった。
初めてやる曲なのに手を挙げてくれる人がいたのがうれしかった。
えもくてよかったですってツイッターで言ってくれた子がいたのがとてもうれしかった。
ラインで誘った女の子が誰も来てくれなかったことが感傷に浸らせてくれてうれしかった。
このメンバーでバンドが組めたこと、ライブができたこと、音が出せたことが何より嬉しかった。





過ぎて行ってしまった青春。
24歳になって今は絵にかいたような青すぎる春だ。





僕は工業高校の高卒で、常に大学生に劣等感と嫌悪感を抱いてきた。
クソみたいだけど、本当に大学生が嫌いだった。
親のすねかじって、飲めない酒飲んで偉そうにして、
大学行ってからいきなり”1限目”とか言っちゃってさ、コンパしまくって、
車のっておしゃれして、それはもうめちゃくちゃ悔しかった。

お酒だって飲めないし、大人数が苦手だし、すぐ顔赤くなるし。

だけどそれは圧倒的な憧れだったと今思う。
大学生、楽しそうじゃん。だからすごくうらやましかったんだ。

学祭でライブをして、少しは劣等感もなくなったかな。
あの日僕らはどの大学生よりも輝いていたしカッコよかったと思う。
いや、カッコよかったんだ。そう思う。







僕らはまだまだへたくそだ。驚くほどへたくそだ。
それでも僕らに残された時間は少ないから、
駆け足で過ぎていく日々に不器用なりにしがみついてライブしていきます。
あの日僕らを見てくれた全ての人に精一杯のありがとうを言いたいです。
やっぱりまださよならは言えそうにないので今度はライブハウスで会いましょう。






クソみたいな日常も、最高すぎるバンドも、うまくいかない恋愛も全部頑張るぞ。